子育て

【専門家監修】搾乳した母乳の保存方法!温め方や期間について解説

赤ちゃんを母乳で育てていると、搾乳をする機会がある人も多いでしょう。赤ちゃんが施設にいて直接母乳を与えられない場合だけでなく、赤ちゃんが飲む量よりも母乳がたくさん出るときに、乳腺炎を予防するため搾乳することがあります。

この記事では、正しい搾乳方法や母乳の保存方法、温め方について詳しく解説しています。この記事を読めば、手だけでなく搾乳機を使った搾乳、搾乳した後の母乳の適切な保存・加温ができるようになるでしょう。

また、母乳を安全に保存するための留意点についても併せて解説しています。ポイントを押さえておけば、いつでも赤ちゃんに新鮮で安全な母乳を与えることができるでしょう。

搾乳の仕方や母乳の保存方法を知りたい方は、是非参考にしてみてください。

乳腺炎の予防にも一役買ってくれる搾乳

外出先で授乳ができなかったり、赤ちゃんがぐっすり眠ったため夜に授乳できなかったりすると、母乳が溜まってしまい乳腺炎になることがあります。また、赤ちゃんの母乳を飲む量が少ない場合も、母乳が残ってしまい乳腺炎になることがあるでしょう。

そのようなときに搾乳をして溜まった母乳を排出しておけば、乳腺炎を予防することができます。

出典:乳腺炎にゅうせんえん|日本大学病院
参照:https://www.nihon-u.ac.jp/hospital/search/term/5

母乳を搾乳する方法

搾乳のやり方には、手で絞る方法と、手動や電動の搾乳機を使う方法の2パターンがあります。ここからは、それぞれの搾乳方法とそのコツ・メリットについて見ていきましょう。

手で搾乳する

手を使って搾乳する方法には、母乳を入れる容器さえあれば準備が整うので、外出先で搾乳する場合でも荷物が少なくてすむというメリットがあります。

搾乳する際は手をきれいに洗い、少し前かがみの姿勢でおっぱいの下に手を添えましょう。親指と人差し指は、乳首の中心からCの形になるよう添えます。

添えた指の腹が合うよう、乳輪の外側から内側へはさみながら圧迫しましょう。このとき同じ場所ばかりでなく、いろいろな方向から圧迫するのがポイントです。

搾乳機を使って搾乳する

搾乳機を使うと、手で行うよりも効率的に搾乳することができます。搾乳機には手動と電動のものがあり、電動のものを使えば、より簡単に搾乳できるでしょう。

搾乳する前に手をきれいに洗い、搾乳機も消毒を施してから使います。搾乳口を乳首に当てて、さまざまな角度から搾乳しましょう。

搾乳した母乳を保存する方法

搾乳した母乳を保存する方法は、冷凍・冷蔵・常温の3つです。

搾乳直後は生の母親細胞と多くの保護成分が含まれていますが、時間経過と温度変化で成分有効性は低下し、更に細菌汚染と病原体増殖リスクが増加するといわれているため、いずれの方法でも適切な保存方法と保存期間を学んでおく必要があります。

冷凍で保存する

母乳は冷凍保存が可能ですが、適切な温度は冷凍庫-18℃(0°F)以下で、保存の効果を発揮するといわれています。家庭用冷凍庫の温度はJIS規格により-18℃以下と決められているため、一般的な冷凍庫で適切な温度を保つことができるでしょう。

-18℃以下の規定がある理由は、微生物が増殖できない温度帯のためです。他食品類と同様に母乳も-18℃以下での冷凍であれば有害となり得る微生物が増殖せず、適切な保存効果が発揮されるといわれています。

保存可能な期間

搾乳した母乳の冷凍保存は、6ヵ月までが最適といわれています。しかし、母乳に含まれる栄養素は-20℃の環境下で3ヵ月維持され、そのうちビタミンCは1ヵ月で消失する可能性があります。

栄養面を考えるなら1ヵ月以内の使用が望ましく、特に低体重児に対しては3ヵ月以内に与えた方が良いでしょう。細菌増殖は6週目までなら大きな問題にはなりませんが、食細胞など生細胞が消失するので、抗菌作用は搾乳直後より低くなります。

保存するときのポイント

冷凍保存するときのポイントは、1回分ずつ小分けして冷凍することです。使うときに1回ずつ小分けされてないと、使う分以外の母乳も解凍環境にさらされることになります。

冷凍食品などもそうですが、解凍したものを再冷凍することは衛生上は避けるべきといわれているため、搾乳した母乳を保存するときは1回ずつ小分けにすることが勧められています。

冷蔵で保存する

冷蔵庫で母乳を保存する場合は4℃以下の環境で保存し、24時間以内を目安として赤ちゃんに与えるようにしましょう。

冷蔵庫は開閉する度に温度が変化しがちです。そのため、ドアポケットに置くのではなく、冷蔵庫の奥の方に置くようにしてください。また、冷蔵庫で保存する場合は、搾乳後すぐに冷蔵庫へ入れるようにしましょう。

出典:p.13 推奨される母乳の保存期間|日本新生児看護学会 日本助産学会
参照:http://shinseijikango.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20111129171724-2DD14C489C3CA9DF61B2B50D756F97E3C3E2E0AD0505DA931B5D2BAEB3844AE0.pdf

常温で保存

母乳は常温で保存することもでき、26℃の温度下で4時間以内の保存が可能です。保存する際は、消毒した清潔な哺乳瓶などを使用します。4時間以内なら常温保存が可能とされていますが、搾乳後1時間以内に与えない場合は、搾乳したらすぐに冷蔵保存する方が良いでしょう。

赤ちゃんが入院している場合は、施設によって保存時間が異なるため、確認して保存するようにしてください。

出典:p.13 推奨される母乳の保存期間|日本新生児看護学会 日本助産学会
参照:http://shinseijikango.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20111129171724-2DD14C489C3CA9DF61B2B50D756F97E3C3E2E0AD0505DA931B5D2BAEB3844AE0.pdf

母乳の保存方法でおすすめなのは?

上述したように、母乳は冷凍、冷蔵、常温保存をすることができますが、これらの保存方法の中で最もおすすめなのは、常温保存です。

冷凍すると長期保存ができるので便利ですが、母乳の成分が変わってしまうため、赤ちゃんには搾乳して間もない常温保存の母乳を与えるのが望ましいと言えるでしょう。

保存した母乳の温め方

母乳の成分を壊さないためにも、保存した母乳を温めるときは電子レンジを使用したり、温め過ぎたりしないよう注意が必要です。ここから、冷凍、冷蔵保存した母乳の温め方を見ていきましょう。

冷凍したものを温める場合

冷凍した母乳は、冷蔵庫でもどす・温水入り容器に入れる・温水や流水にあてるといった方法で解凍できます。

解凍後は哺乳瓶に入れて湯煎にかけ、適温になったら1時間以内に飲ませてください。すぐに飲ませない、解凍から飲ませるまでに少しでも時間が空く場合は、細菌増殖を防止するため、飲ませる直前まで冷蔵庫で保存してください。

冷蔵したものを温める場合

冷蔵した母乳の場合は、哺乳瓶に入れてから湯煎にかけて、適温になったら飲ませます。冷凍した母乳と同様に、できるだけ早く飲ませること・すぐに飲ませないときは冷蔵庫に入れておくことを忘れないようにしましょう。

母乳を保存するときの8つのポイント

母乳は赤ちゃんに与えるものなので、搾乳したら衛生面などに気を付けて保存する必要があります。ここからは、母乳を保存するときに気を付けるべきポイントについて見ていきましょう。

  • 清潔な環境で搾乳する
  • 電子レンジや熱湯で温めないようにする
  • 搾乳した順番に飲ませる
  • ミルクと搾乳した母乳を混ぜないようにする
  • 再冷凍や再冷蔵をしないようにする
  • 母乳を混ぜるときは優しく振るようにする
  • 母乳を運ぶ場合は保冷剤を活用する
  • 赤ちゃんが施設にいる場合は保存方法を相談する

1:清潔な環境で搾乳する

母乳に雑菌が入らないよう、清潔な環境で搾乳するようにしましょう。手で搾乳する場合も、搾乳機を使用する場合も、石鹸で手をきれいに洗います。

使用する搾乳機や保存容器も、消毒済みのものを使用しましょう。搾乳したものを保存容器に移す場合は、保存容器の内側に指が触れないように気を付けることも大切です。

2:電子レンジや熱湯で温めないようにする

母乳に含まれる母乳由来酵素は40℃以上で活性を失うといわれているため、冷凍、冷蔵保存した母乳を温める際は、温め過ぎないように注意が必要です。温め過ぎると、赤ちゃんがやけどをしてしまう可能性もあります。

また、母乳が熱くなり過ぎてしまうため、電子レンジや熱湯では温めないようにしましょう。

出典:まめ知識|千葉県こども病院 専門・認定看護師会
参照:https://www.pref.chiba.lg.jp/kodomo/shokai/anshin/documents/20132011vol10.pdf

3:搾乳した順番に飲ませる

搾乳してから保存期間が過ぎると、その母乳は赤ちゃんに与えることができなくなってしまいます。母乳を保存する際は、保存容器に搾乳した日時を記入して、搾乳した順番に飲ませるようにしましょう。

4:ミルクと搾乳した母乳を混ぜないようにする

母乳にミルクを混ぜてしまうと、成分が変わってしまう可能性があります。そのため、ミルクを与えるときは搾乳したものを混ぜずにミルクだけを与え、母乳は母乳だけで与えるようにしましょう。

5:再冷凍や再冷蔵をしないようにする

一度解凍した母乳や温めた母乳は、衛生的に好ましくないので、再冷凍や再冷蔵、再加熱はしないようにしましょう。

飲み残したものも再保存することはできないため、赤ちゃんが飲み切れるだけの量を使用するようにしてください。もし飲み残した場合は、保存せずに廃棄しましょう。

6:母乳を混ぜるときは優しく振るようにする

母乳は冷やすと脂肪分が分離することがあるため、湯煎で温めて与える際は、容器を優しく左右に振るようにして混ぜ合わせましょう。このとき、勢いよく混ぜたり、振ったりすると、母乳の栄養成分や保護的成分が損なわれる恐れがあるので注意してください。

7:母乳を運ぶ場合は保冷剤を活用する

冷凍・冷蔵保存していた母乳を外出先に持ち運ぶ際は、低温の状態を保つことができるよう、保冷剤を活用しましょう。低温状態を長時間キープできるクーラーボックスに入れるなど、母乳が変質しないよう注意して持ち運ぶようにしてください。

8:赤ちゃんが施設にいる場合は保存方法を相談する

病院や保育園など、赤ちゃんがいる施設によって、母乳の管理方法が決められている場合があります。母乳は赤ちゃんにとって大切な栄養源なので、施設では母乳の衛生面に細心の注意を払っていることが多いです。

赤ちゃんが飲む量によって一度に保存する量は変わってくるため、保存方法などについて施設と相談するようにしましょう。

保存した母乳のにおいが気になる理由

冷凍保存した母乳を温めたときに、においが気になる人もいるでしょう。においが気になるのは、母乳を冷凍すると母乳に含まれる脂肪が分解され、においの原因となる脂肪酸が増えるからです。

においが気になる場合でも、多くの赤ちゃんは飲んでくれるでしょう。

搾乳した母乳を安全に保存しよう

母乳は赤ちゃんにとって大切な栄養です。仕事や入院などで赤ちゃんと一緒にいることができなくても、搾乳すれば赤ちゃんに母乳を飲ませられます。

記事の内容を参考に、いつでも赤ちゃんに母乳を与えられるよう、母乳を安全に保存するポイントを把握しておきましょう。