妊娠症状

【専門家監修】40歳代の妊娠で考えられるリスク5つ|気をつけたいこととは

40歳代の妊娠・出産とは?

厚生労働省の調べによると、結婚年齢の上昇に加えて医療技術が発展したおかげで、全体に占める40歳代の結婚・妊娠・出産の割合は「平成20年の約32.1%から平成22年には約35.7%に増加」という傾向にあります。

妊娠出産が40歳代で増えている一方で、日本では高齢・高年初産とよばれるのが35歳以上で、さまざまな問題があると言われています。それらについて次の項目でご紹介します。

妊娠・出産に年齢は関係ある?

一般的に35歳以上の初妊婦のことを日本では、高齢初産と呼んでいます(2020年調べ)。妊娠・出産と年齢の関係で最も気になるのが、母体年齢が35歳以上の場合です。この場合、流産・死産、早産のリスク、妊娠高血圧症候群、多胎妊娠などが増加します。

20歳代では1000人に1人の確率であるダウン症も、40歳では100人に1人の確率となります。つまり年齢によって妊娠・出産時にリスクが高くなる傾向があります。

40歳代でも自然妊娠は可能

30歳を過ぎる頃より、自然妊娠の確率は低くなる傾向があります。その原因となるのが、子宮内膜症の合併、卵子の老化などと言われています。

しかしながらそのような加齢の問題はありますが、40歳を過ぎても自然妊娠をすることは可能です。不妊症の定義は、1年以上妊娠できない場合は不妊症となります。

妊娠する可能性があるカップルの場合で性行為を行い妊娠できる確率は3ヶ月ほどで50%、6ヶ月で70~80%の妊娠率と言われております。

年齢に関係なく個人の体力にもかかわっています。若くても病弱の場合は妊娠する確率は低くなり、40歳代だから自然妊娠ができないという理由にはならないでしょう。

40歳代の妊娠・出産で考えられるリスク5つ

現代の日本では、35歳以上が高齢出産とみなされ、妊娠出産においてリスクが高いと言われています。そのため、40歳代の妊娠・出産にもリスクがつきものです。

ここでは40歳代の妊娠・出産において起こりうる5つのリスクについて解説をしていきます。

40歳代の妊娠・出産のリスク1:先天異常の可能性

40歳代の妊娠・出産のリスクとしてあげられるものに、「先天異常の可能性」があります。妊婦の年齢が高齢になるにつれて、染色体異常、先天奇形が増える傾向があります。

なかでも、35歳で1/192、40歳で1/66、45歳で1/21という形で、常染色体トリソミーが増加することが分かっています。

また、染色体に関連しない先天奇形は、妊婦の年齢にあまり左右されていないという報告もあるようです。

40歳代の妊娠・出産のリスク2:流産の確率が高くなる

40歳代の妊娠・出産のリスクとして「流産の確率が高くなる」というものが挙げられます。仮に妊娠が初めてでなくとも35歳以上になると流産率が高くなるのです。

22歳前後では8.7%の流産率が、48歳以上の場合は84.1%という高い確率になります。

40歳代の妊娠・出産のリスク3:妊娠高血圧症候群を発症しやすい

40歳代の妊娠・出産のリスクに妊娠高血圧症候群になりやすいというのがあります。普段、高血圧とは無縁のかたでも妊娠中は高血圧になりやすいと言われています。

なかでも高齢の場合は、慢性高血圧合併妊娠を発症する恐れが高いと言われています。高齢に関係なく妊婦のおよそ20人に1人の割合で発症する病気で、早産になりやすい傾向があります。

発症率は妊婦さんの肥満度にも関与していますので、胎児への影響も考えて、健康管理、体重増加には気をつけないといけません。

40歳代の妊娠・出産のリスク4:妊娠糖尿病を発症しやすい

40歳代の妊娠・出産のリスクとしてあげられる症状に、妊娠糖尿病があります。40歳以上の初産では、妊娠糖尿病が有意に高いという報告があります。(日産婦神奈川会誌,41(2):132-136,2005)

このような異常が35歳以上の高年初産には多く見られる傾向です。妊娠糖尿病では、母体では羊水の異常を引き起こし、胎児は難産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症の影響が出やすくなると言われています。

40歳代の妊娠・出産のリスク5:難産になる可能性がある

40歳代の妊娠・出産のリスクとしてあげられるものに難産があり、それには下記のいくつかの原因があるとされています。

1つには妊婦の産道が硬くなっている傾向です。母体の加齢に伴い、子宮筋の収縮する力も低下の傾向にあり、陣痛が微弱になることも難産の要因です。

また、肥満、子宮筋腫なども増える年齢であること、糖尿病など他の病気を合併することで胎児が大きくなりやすいことも難産の原因の1つと言われています。

40歳代の妊娠・出産で気をつけたいこと4つ

40歳代の方が健康で、元気な赤ちゃんを生むには、どのようなことに気をつけながら妊娠生活を送るとよいのでしょうか。ここでは、40歳代の妊娠・出産で気を付けたい4つのことをご紹介します。

40歳代の妊娠で気をつけたいこと1:妊娠前から葉酸を服用する

40歳代の妊婦が気を付けたいことの1つに、妊娠前から葉酸の摂取をすることです。日本人の食事摂取基準によると、18歳から49歳までの女性が一日に摂取すべき葉酸の量は、240㎍と言われています。

とくに、妊娠の可能性がある場合は、妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、1日当たり400μgを摂取するといいと言われています。理由は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げてくれるからです。

40歳代の妊娠で気をつけたいこと2:体重管理

高齢妊娠、出産に関係なく、妊娠中の体重増加量が7kg未満の場合には低出生体重児を出産するリスクが有意に高いという報告もあることや、体重増加が12kgを超えると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などになるリスクが有意に高いという報告もあることから、妊娠中の妊婦さんは体重管理を心がける必要があります。

とくに、高齢になるとさきほども述べたような妊娠中にかかる妊娠高血圧症候群や糖尿病などにかかる率が、体重の増加によって更に高まるためです。

40歳代の妊娠で気をつけたいこと3:妊婦健診に行く

40歳代の妊娠で気をつけたいことに、妊婦検診があります。仕事をしていたりすると、病院に行くのは大変です。また、健康に過ごしているから、定期的にチェックする必要性を感じない人もいるでしょう。

しかしながら、高齢ということで出産時のリスクも高いので、定期的に検診をうけて母体だけでなく、胎児の様子をチェックしてあげることが元気な赤ちゃんを産むことにつながります。

また、仕事をしていて検診がしにくくても、男女雇用機会均等法第12条により会社に言うと勤務中に受診できる制度があります。

妊娠前から健康診断を受ける

年齢に関係なく妊娠出産は女性の母体に影響を与える恐れがあります。そのため、妊娠を希望している方は、少しでも事前にリスクを減らすために下記の検診を受けておくとよいでしょう。

子宮がん検診、HPV検診、経腟超音波検査、風疹抗体検査、ワクチン接種、麻疹抗体検査、感染症検査、甲状腺ホルモン検査などです。また、その他気になる方は、血液検査をうけることで、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV、貧血、糖尿病、高脂血症等をチェックできます。

40歳代の妊娠で気をつけたいこと4:運動の習慣を身に付ける

40歳代の妊娠で気を付けたいことに、運動の習慣が身についているかがあります。生活習慣病が高くなるのは、男女ともに40歳代から50歳代にかけてだと言われています。

この生活習慣病のリスクが高いのは妊娠中の妊娠高血圧症候群などのような妊娠中毒症を起こす要因となります。このようなリスクを予防するために、日頃から運動をすることを習慣にしておきましょう。

40歳代の妊娠・出産で避けるべき生活習慣4つ

40歳代で妊娠・出産をするにあたり、リスクを避けるためにはどのようなことを心がけるとよいのでしょうか。ここでは、普段の生活で気をつけたいこと4つをご紹介します。ぜひ、これらの生活習慣に留意しながら妊娠期間中を過ごしましょう。

40歳代の妊娠で避けたい生活習慣1:タバコ

女性にとって妊娠出産に影響があるとされるのがタバコの喫煙です。胎児の成長にも影響があるとされ、低出生体重となる原因を作ると言われています。

体内にいる時だけでなく出産後にもタバコの喫煙は問題があるといわれており、生まれた赤ちゃんの乳児突然死症候群を引き起こす要因だとも言われています。40歳代は、妊孕性の問題もあります。

そのほか、可能性としては、口唇裂、子宮外妊娠、自然流産なども起こすと言われています。

40歳代の妊娠で避けたい生活習慣2:カフェイン

妊娠中のカフェインはどのような影響を与えるのでしょうか。東京福祉大学教育学部が発表した「コーヒー/カフェイン摂取と日常生活-妊婦、胎児、乳幼児、小児への影響-」の研究によると、1日当たり200㎍以下のカフェインの摂取したとしても、「生殖や出産前症状を誘発・悪化するとの証拠は見当たらない」という報告があります。

これらのことから、200㎍以下のカフェイン摂取は問題ないと見ることができます。また、この研究にはコーヒーなどのカフェインを好んで摂取していた人も妊娠がわかると臭いなどが気になり、飲めなくなるなどカフェインの減少傾向にあるということも報告されています。

40歳代の妊娠で避けたい生活習慣3:ストレスをため込まない

女性の妊娠中および産後は、マタニティブルーが悪化してしまうとうつ病を併発しやすい時期です。そのため、なるべく普段の生活ではストレスをためこまないように、心が落ち着く環境で過ごせるようにしましょう。

妊婦さんや産後の方はうつ病にかかっていても、適切な処置を受けることができないケースが多々あるのが現状です。ストレスをためないように生活すること、また何かあったら家族と話したり、専門家に適切なアドバイスをもらうようにしましょう。

40歳代の妊娠で避けたい生活習慣4:アルコール

妊娠期間中に妊婦が気をつけたい生活習慣の1つに、アルコールがあります。妊婦がアルコールを摂取することでお腹の子どもに与える影響については、低体重、顔面を中心とした奇形、脳障害などがあると言われています。このようにアルコール摂取により引き起こされる症状を、胎児性アルコール症候群と呼ばれています。

それでなくても40歳代の妊婦の場合は、胎児にさまざまなリスクが伴います。母体でなく、胎児に影響が出るので、妊娠がわかった後はアルコールを摂取しないように心がけましょう。

40歳代の妊娠・出産はリスク回避に取り組み元気な赤ちゃんを出産しましょう

40歳を過ぎても健康であることで自然に妊娠することは不可能ではありません。また現代社会では社会で働く女性が多いことから妊娠の時期も高齢化しつつあります。

高齢による妊娠・出産にはリスクは伴いますが、全員にリスクがあるわけではありません。逆に若くてもリスクが高い人もいます。健康は人それぞれです。妊娠を希望する人は、生活習慣で回避できるリスクを知り、健康な状態で妊娠・出産ができるような生活を過ごしましょう。