妊娠症状

【専門家監修】妊娠すると関節痛が起こるのはなぜ?痛みが出やすい場所5つを紹介

妊娠中の関節痛とは?

妊娠すると腰痛などの関節痛がおきることがあります。これはホルモンバランスの変化によるものです。妊娠するとリラキシン・エストロゲン・プロゲステロンという女性ホルモンの影響で筋肉が緩みます。これは胎児のスペースを確保するためだといわれています。

関節は筋肉や靭帯によって保護されているので、関節周辺の筋肉や靭帯が緩むと関節も緩み、それに伴って痛みがでることもあるのです。

妊娠初期から痛み

妊娠初期に、腰の痛みを訴える妊婦さんはとても多いです。腰が重いような、だるいような痛みで、生理前のような感じと言われています。関節周りの筋肉が緩み、靭帯が引っ張られることによる違和感などが原因です。

妊娠中期以降は子宮が大きくなり、腰骨や背骨を圧迫します。妊娠後期には胎児が大きくなり、この圧迫によって関節痛が悪化する場合もあります。

関節痛と腰痛の違い

女性ホルモンの影響で筋肉が緩み、その緩みが関節の緩みを招いて、関節痛を誘発することは説明いたしました。その痛みをかばうような姿勢や歩き方をしていると、関節痛から腰痛につながることもあります。

お腹が大きくなってくると、自然と前傾姿勢になり、腰椎や骨盤を支える筋肉に負荷がかかります。これが新たな腰痛の原因となるのです。

仙腸関節が関節痛の原因?

仙腸関節とは、骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節です。関節というと自由に動くイメージがありますが、仙腸関節は靭帯によって強固に固定されています。

妊娠によるホルモンバランスの影響で筋肉が緩むと、この強固な仙腸関節にも緩みが出ます。仙腸関節が動くと痛みを感じるようになるのです。

仙腸関節障害とは

仙腸関節が動くことにより、痛みが出ることを仙腸関節障害と言います。一般的に妊娠中の腰痛に仙腸関節障害が多いと言われていますが、誰でもなる可能性はあります。

妊娠中の仙腸関節障害としては、緩んだ仙腸関節に子宮の重みが加わり、仙腸関節が広がってしまうことがあります。その結果、仙骨と尾骨が後ろに押し出される状態になり、痛みが出ます。

妊娠中の仙腸関節による関節痛が出やすい場所5つ

仙腸関節障害による関節痛は、仙腸関節を中心に骨盤に出るのが一般的です。おしり、背中、下半身などに痛みが生じる場合もあります。

ぎっくり腰のように急に痛みが出る場合は、仙腸関節の捻挫が原因と考えられています。この捻挫を放っておくと、慢性的な腰痛になってしまいます。腰椎の病気(椎間板ヘルニアなど)と似ているので、注意が必要です。人によっては膝や指、腕に痛みを感じる方もいるでしょう。

仙腸関節障害が腰椎の病気に合併することもあります。

妊娠中の仙腸関節による関節痛が出やすい場所1:足の付け根

妊娠初期から中期にかけて、足の付け根や股関節が痛くなる場合があります。筋肉が緩むことが原因で、靭帯が引っ張られるようになり、痛みが出るのです。

長時間立っていたり歩いたりすることで、発症することが多いです。

妊娠中の仙腸関節による関節痛が出やすい場所2:腰

腰痛は妊娠初期に発生します。妊娠初期は女性ホルモンの働きによって、筋肉や関節が緩んできます。胎児のスペースを確保して、出産しやすい身体になっていくのです。

その影響で骨盤に血液が溜まりやすくなり、腰が重く、だるい感じがします。

妊娠中の仙腸関節による関節痛が出やすい場所3:背中

妊娠中期から後期にかけて、背中の痛みを経験する方が多いです。

お腹が大きくなってくると、重みで前かがみになりがちです。良いバランスを保つために、無意識に背中をそらすようになると、背中に負担がかかります。また体重が増えると、ますます背中の筋肉に負荷がかかることとなります。

妊娠中の仙腸関節による関節痛が出やすい場所4:骨盤

妊娠初期から中期にかけて、骨盤のあたりに痛みがでます。胎児を収容するために、骨や靭帯が伸びたりするためです。

卵巣が大きくなることで、卵巣がねじれやすくなります。その結果、卵巣へ流れる血液が減って、骨盤周辺が痛みます。

妊娠中の仙腸関節による関節痛が出やすい場所5:おしり

女性ホルモンの働きが骨盤の靭帯や恥骨を緩ませ、骨盤や仙腸関節が緩みます。このことで坐骨神経が圧迫され、痛みが生じます。

坐骨神経の近くを通る、おしりの筋肉「梨状筋」が緊張することで、坐骨神経が圧迫され傷む場合もあります。妊娠中にも発症する方がいらっしゃいますが、産後になって痛みを感じる方が多いようです。

妊娠中の関節痛の対処方法5つ

関節痛があっても、妊娠していると動くのも億劫になり、病院にも行きにくくなります。しかし自己流で対処しようとすると、場合によっては胎児に悪影響を与えることがあります。

気になるときは、迷わずかかり付けの産婦人科医に相談することをおすすめします。

自分なりの判断で出来る対策は、寝るときの姿勢に気を付ける、身体を温める、正しい姿勢で歩くということです。

妊娠中の関節痛の対処方法1:安静にする

関節痛がひどいときは、無理せずに安静にすることが一番です。出来るだけ腰に負担がかからないような姿勢を心がけることも大事です。

寝る時には仰向けに寝て体重が分散させると、腰の負担が軽減します。手足を温めたり、温かい飲み物で身体の中から温めたりするのもおすすめです。

妊娠中の関節痛の対処方法2:ストレッチをしない

適度な運動は、腰痛の予防や痛みの緩和に効果があると言われています。妊婦さんのためのマタニティエクササイズやストレッチの教室も多いです。

しかし自己流のストレッチやマッサージは、身体の負担になる場合もあります。

必ず医師の許可を得てから行いましょう。体調が悪いときやお腹が張るときには、無理をせず、すぐにストレッチをやめるようにしましょう。

妊娠中の関節痛の対処方法3:自己判断で湿布をはらない

腰痛のときには、湿布を貼る方も多いでしょう。しかし湿布を貼る前に医師に相談してください。皮膚を通して湿布の薬成分が体内に入り、胎盤を通して胎児に届くと考えられています。

湿布には、非ステロイド性消炎鎮痛薬が含まれていることがあり、この成分が影響して、胎児の心臓近くの血管を収縮させてしまう可能性があります。

妊娠中の関節痛の対処方法4:医療機関を受診する

安静にしていても痛みがひどくなる場合は医療機関を受診するのが安心です。

まずかかりつけの産婦人科に相談しましょう。関節痛が、婦人科の疾患が原因である場合もあります。関節痛の治療が必要となれば、整形外科を受診しましょう。

妊娠中の関節痛の対処方法5:コルセットをする

コルセット(骨盤ベルト)が腰痛予防にもなります。

コルセットとは、骨盤部分を固定するベルトのことで、骨盤のゆがみやズレを矯正するものです。出産後もコルセットをすることで、骨盤の位置が戻りやすくなります。

骨盤ベルトをする際には位置が重要です。恥骨結合の上当たり(足のつけ根の少し上)に気持ちいいと感じる強さで巻くようにしましょう。

妊娠中の関節痛は自己判断で対処せずに医療機関を受診しよう

関節痛が治らないときは自己判断で対処せずに病院へ行きましょう。

まずは産婦人科医に相談してください。特に初産の場合、関節痛だと思っていた症状が妊娠トラブルの前兆だったということがあります。早産や切迫流産の前兆が腰痛と言われているからです。

痛みだけでなく、その他に不調がみられる場合にも症状を詳しく説明して診断してもらいましょう。